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甲府地方裁判所 昭和51年(ワ)197号 判決 1977年5月13日

主文

一  被告は原告に対し、金一二、九五三、八二九円及び昭和五一年七月二七日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一  原告は主文同旨の判決を求め、請求原因として次のとおり述べた。

一  事故の発生

原告は次の交通事故によつて傷害を受けた。

1  発生時・昭和四七年八月二七日午後一時四〇分ころ

2  発生地・韮崎市円野町内井地内路上

3  加害車・大型貨物自動車(山梨11さ766)

4  右運転者・訴外穴水正文

5  態様・原告運転の普通貨物自動車の右側部に、加害車がセンクーラインを超えて同車の右前部を衝突させた。

6  結果・右肩関節開放性粉砕骨折(右上肢切断)右顔面打撲裂傷

二  責任原因

被告は、加害車を保有し自己のために運行の用に供していたものであるから自賠法第三条により原告の損害を賠償する責任がある(なお、原告において被告が加害車輌の保有であることを知つたのは昭和五一年六月)。

三  治療経過

昭和四七年八月二七日より同四八年三月一四日まで韮崎市韮崎町四四五四韮崎外科病院に入院(実日数二〇〇日)。

入院治療中、輸血によるいわゆる「血清肝炎」に罹患し、昭和五一年三月五日から同年四月二七日までの間(五四日)前記韮崎外科病院に入院し、現在もなお通院している。

四  損害

1  傷害による損害

(一) 付添費 金三六〇、〇〇〇円

一日につき金一、二〇〇円とし、傷害の内容により一日一・五人の付添を要した。従つて一、二〇〇円×一・五人×二〇〇日で金三六〇、〇〇〇円となる。

(二) 慰謝料 金一、〇〇〇、〇〇〇円

入院二五四日(血清肝炎による入院分も含む)

(三) 逸失利益 金七〇五、二七〇円

昭和四七年六月当時、原告は株式会社保栄物産に勤務しており、月額金四八、五〇〇円の給与を受けていたが、本件事故による受傷により同社に復帰した昭和四八年五月一〇日までの間(一一・五ケ月)、右収入を得ることができなかつた。

また、昭和五〇年五月以降の給与は金七三、七六〇円であつたが、血清肝炎で入院中(二ケ月間)右給与を受けることができなかつた。

2  後遺症による損害

(一) 慰謝料 金三、四三〇、〇〇〇円

(二) 逸失利益 金一二、五八八、五五九円

原告は昭和二五年六月一七日生の健康な男子であり、受傷前前記株式会社保栄物産において、外交・運転・貨物の積降し等の業務に従事していたが、受傷後も同社の恩情的処遇のもとで軽作業に就いてきたが、受傷前以上の労働力消費と肝炎併合により欠勤が多く、正常の勤務は不可能であつた。そのため昭和五一年六月一日付で同社を退社せざるを得なくなり、現在は無職の状態である。

原告は現在無収入であるが、将来軽作業に従事することも決して不可能ではないので、本件事故により受けた右上肢切断の傷害による原告の労働力の喪失は、同人が中程度の肉体労働者であつたことに照し、七割とみるのが相当である。

また、原告の労働可能年数は同人が六七歳に達するまでの向う四一年間であり、同人が前記株式会社保栄物産の退職時の給与を金七三、二六〇円であつたから、同人の将来得べかりし利益の喪失額は(ホフマン式計算方法により)少なくとも金一二、五八八、五五九円となる。

五  損害の填補

1  原告は、加害車輌にかかる自動車損害賠償責任保険金である金三、四三〇、〇〇〇円を受領しこれを前記四、2、(一)の慰謝料請求権に充当した。

2  原告は、訴外穴水正文より現在に至るまで月額金二〇、〇〇〇円宛、計三五回にわたり損害金の一部として合計金七〇〇、〇〇〇円を受領し、これを前記四、1、(三)の内金にそれぞれ充当した。

六  結論

よつて原告は被告に対し、前四に各記載の損害金計一七、〇八三、八二九円から受領済の計四、一三〇、〇〇〇円を控除した金額の内金一二、九五三、八二九円および本訴状到達の翌日から完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴に及ぶものである。

第二  被告は適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、かつ答弁書その他の準備書面を提出しないから、民訴法一四〇条三項により原告主張事実を自白したものとみなす。右事実によれば、原告の本訴請求は正当と認められるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき同法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 東孝行)

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